第５６回全日本空手道選手権大会（2024年１０月５、６日、東京・東京体育館）

　フルコンタクト空手の日本王者を決める「第５６回オープントーナメント全日本空手道選手権大会」（新極真会主催）が５、６日、東京都渋谷区の東京体育館で開催された。体重無差別で争われる国内最高峰の大会に、流派を超えて猛者たちが全国から集結。組手に加えて、今回からは型の部門も行われた。新極真会福岡支部では組手の男子で多田成慶（２４）が初優勝。同女子では藤原桃萌（２５）が３位、網川来夢（２１）が４位に入る活躍を見せた。　（村田　和哉）

藤原桃萌 「引退」考えるも 緑師範の言葉で闘志再び

　女子組手準決勝のコート。新極真会福岡支部の藤原桃萌（２５）は、同じ流派で世界女王の鈴木未紘と向かい合った。３度目の対決だった。

　藤原は、昨年の世界大会で４位に入り、今年は全日本フルコンタクト空手道選手権（ＪＦＫＯ）重量級で準優勝、空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ（ＫＣＣ）で３位と、日本の女子組手で存在感を高め、鈴木と接戦を繰り広げてきた。今大会の組み合わせトーナメントが発表されると、ライバルの名前が真っ先に目に留まった。

　優勝タイトルをつかむためにはどうしても超えなければならない壁。試合開始から、間合いを取らずに真っ向勝負で挑んだ。最終延長の終了を告げる笛の音が鳴るまで攻撃の手を止めることはなかったが、惜敗。「勝敗を決めるのは技の差よりも、気持ちの差だと思っていた」と藤原。鈴木も「距離を取ってカウンターを簡単に狙えるような相手ではないので、私も引く気持ちはなかった」と振り返る激闘だった。

全力でぶつかった同門対決は網川に５－０　

　藤原は３位決定戦に回り、福岡支部の後輩で普段の稽古でも一緒に汗を流す網川来夢（２１）と対戦。昨秋の世界大会準決勝以来の顔合わせで、今大会は２人とも頂上決戦を目標にしてきたが、実現できなかった。

　コートに上がる前に、互いにアイコンタクトでファイティングポーズを決め、笑みもこぼれた。全力でぶつかり合った試合は、本戦５―０で藤原が勝利。試合を終えた両者は笑顔で握手を交わした。

　藤原は昨秋の世界大会後に、やりきった気持ちがあり、一度は現役引退を考えた。しかし、仲間や家族から「まだやれるよ」と励まされ、緑師範からも「まさかやめないよな？」と引き留められた。現役選手としてまだ期待してくれている言葉が嬉しく、闘志に再び火がついた。「みんなに優勝を届け、緑師範にも恩返しをしたい」と、表舞台で戦い続ける覚悟だ。来年のＷＦＫＯに照準を定め、これからも稽古に励む。

藤原桃萌
▼１回戦　○５―０　石坂幸香（神奈川東横浜支部）
▼２回戦　○５―０　澤井ナノ（東京城南川崎支部）
▼準々決勝　○５―０　漢鈴那（佐賀筑後支部）
▼準決勝　●０―０、０―０、０―２、１―４　鈴木未紘（厚木・赤羽支部）
▼３位決定戦　○５―０　網川来夢（福岡支部）

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網川来夢 パワーアップの成果発揮「力出し切った」

　雪辱を期して新極真会福岡支部の網川来夢は準決勝で、同東京城南川崎支部の目代結菜（２１）との対決に臨んだ。互角の展開が続き、最終延長までもつれ込む激闘となったが、判定１―４で敗れた。

　網川にとっては、今年のＪＦＫＯ軽重量級準決勝で敗れた相手で、今大会の目標の１つが、目代に勝利することだった。初日と２日目の予選を順当に突破すると、予想通りにライバルも勝ち上がってきた。

　３度目の対戦。開始直後は、互いに相手の出方をうかがっていたが、目代の素早く強い突きに網川は得意の膝蹴りで対抗するなど、互いに一歩も譲らない展開となった。本戦、延長、再延長でも決着はつかず、体重判定へ。大会規定８キロ以上の差も認められなかったため、最終延長戦に突入し、会場は両者への声援で包まれた。その結果、判定１―４で目代の勝利に終わった。

　あと一歩及ばなかったが、網川は「自分の出せる力は出し切った」と振り返り、目代は「ＪＦＫＯの時よりも網川選手はパワーアップしていた」と語った。

昨年全九州大会で涙 悔しさばねに飛躍

　網川は、日本代表に選ばれていながら、昨年の全九州空手道選手権では２回戦で敗退。コートの撤収を終えた会場の中央で、人目もはばからず泣いた。その悔しさを胸に、稽古に取り組み、昨秋の世界大会で２位、今年のＪＦＫＯ軽重量級で３位、ＫＣＣでも３位と大舞台で躍進を遂げてきた。今大会は、同じ福岡支部の藤原桃萌に３位決定戦で敗れて４位に終わったが、着実に力をつけている。「全九州大会で負けたことに意味があった」と言う網川。あの日の涙から始まった空手人生の第２章で、さらなる飛躍を目指す。

網川来夢
▼１回戦　○０―０、５―０　村上莉菜（大阪東部支部）
▼２回戦　○４―０　小嶋夏鈴（東京江戸川支部）
▼準々決勝　○４―０　渡部はるあ（蒼天塾）
▼準決勝　●０―０、０―０、０―１、１―４　目代結菜（東京城南川崎支部）
▼３位決定戦　●０―５　藤原桃萌（福岡支部）

（2024/10/18紙面掲載）

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