【フルコンタクト空手】前平斗真(新極真会福岡支部)が軽中量級の日本王者に/第9回全日本フルコンタクト空手道選手権/流派超え、男女5階級に全国の強豪が集結/福岡支部から6人入賞
- 2024/6/11
- 新極真会
直接打撃を行うフルコンタクト空手の男女階級別日本王者を決める「第9回全日本フルコンタクト空手道選手権(JFKO)」が5月25、26日、大阪市のエディオンアリーナ大阪で開かれた。全国から流派を超えて男子256人、女子119人が集結し、熱戦を繰り広げた。男子14人、女子6人が挑んだ新極真会福岡支部勢は、男子軽中量級で前平斗真(24)が初優勝を果たした。前平に決勝で敗れた大坪裕希(24)が準優勝。男子重量級で多田成慶(24)、女子重量級で藤原桃萌(25)が準優勝した。
大坪との「同門対決」制した!
決勝が始まる直前、クールな前平が自身を鼓舞するように、大きな声を上げた。気迫を前面に出した表情からは、福岡支部の「同門対決」となったこの一戦にかける思いが見て取れた。
大会に向け、1学年上の大坪とは共に汗を流し、切磋琢磨してきた。手の内は互いに知り尽くしている。一昨年の準決勝で対戦し、その時は勝利していた。ただ「試合になったら同門とか関係ない。意識せず、自分のやってきたことを出そう」。目の前の相手を倒すことだけに集中した。
スピードとテクニックなら大坪に分があるが、前平は「打ち合いなら負けない」と考えていた。先手を奪いながら、うまく距離を詰め、接近戦になると、左右の突きや下段、膝蹴りなど多彩な技で攻め立てた。旗判定となり、本戦5―0で決着。「どっちが勝ってもおかしくなかった」と、紙一重の勝利を強調した。
「質、量ともに日本一の練習をしてきた」と臨んだ昨年。準決勝で敗れ、涙した。何が足りなかったのか。自分の組手スタイルとは。一から見つめ直し、この1年間、黙々と練習することで、積み上げてきたものがあった。「優勝できる自信があった。それに見合う練習をしてきたから」。少し誇らしげに、笑った。
大坪をはじめ、同世代に実力者がそろう福岡支部。「多田選手だったり、藤田春人だったり、刺激になる。強くなるための環境はそろっているので、あとは自分次第」とうなずいた。
今回の優勝で来年の5月31日に開幕する第1回WFKO世界大会の出場権を手にした。前平にとっては初めての日本代表。「世界一になるためには、今年以上の練習をしないと勝てない」。この1年間が間違ってなかったという自負を胸に、1年後の決戦に向け、再び稽古の日々が始まる。
【前平の成績】
▼2回戦 ○5―0 佐藤瑠誠(武道教育センター優至会)
▼3回戦 ○5―0 金乙道輝(新極真会広島支部)
▼4回戦 ○5―0 中山拳杜(白蓮会館)
▼準々決勝 ○5―0 深沢優斗(岩崎空手)
▼準決勝 ○失 格 平木楓(白蓮会館)
▼決勝 ○5―0 大坪裕希(新極真会福岡支部)
大坪悔し、昨年に続いて準V
大坪はあと一歩、頂点に届かなかった。一昨年が3位、昨年が準優勝。それだけに今大会にかける思いは強かった。「勝ちにこだわってやってきたんですが」と唇をかんだ。それでも、決勝までは強豪相手でも、危なげなく勝ち上がったように、安定感ある組手が光った。この準優勝で来年のWFKOに出場できる権利は得た。悔しさをバネに変え、雪辱してみせる。
【大坪の成績】
▼2回戦 ○5―0 八木康平(極真会館世界全極真志優会)
▼3回戦 ○5―0 佐藤誠真(フルコンタクト空手道空武會)
▼4回戦 ○4―0 百富悠(総極真選手会)
▼準々決勝 ○4―0 小西佑哉(極真会館中村道場)
▼準決勝 ○0―2、失 格 呉屋広樹(極真会館 関西総本部)
▼決勝 ●0―5 前平斗真(新極真会福岡支部)
準Vの多田、20㌢差なんの。1分間のラッシュで後藤を圧倒
前回まで軽重量級2連覇の多田は、重量級に階級を上げて挑んだが、決勝で涙をのんだ。「自分の今持っている力は出せたと思います」。決勝では多田大祐と激しい打撃戦を繰り広げ、延長で敗れたが、観客席からは大きな拍手が送られた。
最も本人らしさが出たのは、準決勝の後藤優太との一戦だろう。自身の170センチ、90キロに対し、190センチ、100キロの後藤は堂々のV候補。強烈な下段や膝で何度も重量級の猛者をKOしてきた実力者にも、ひるまなかった。
「相手は大きいので、距離を取ってスタミナを温存しつつ、うまく懐に入ろうと思っていた」。至近距離に飛び込み、次々と突きを繰り出した。後藤も当然、応戦する。「蹴りは重いし、痛かったです。突きも強いし。でも我慢して。自分の心との勝負でした」
残り1分。「行け!」。セコンドの声を合図にラッシュを開始した。通常は残り30秒くらいからラッシュをかける選手が多い中、思い切って勝負に出た。最後までスタミナは切れない。大声援にも背中を押され、攻めきってみせた。
優勝には届かなかったが、重量級でも互角に戦えるところを示した。「最後は足が上がらなかったので、下半身をもっと鍛えたい」。伸びしろは、まだ十分にある。
【多田の成績】
▼2回戦 ○5―0 辰巳存(聖武会館)
▼3回戦 ○5―0 野口智史(我流空手道北斗會)
▼準々決勝 ○5―0 土橋立弥(白蓮会館)
▼準決勝 ○4―1 後藤優太(空手道MAC)
▼決勝 ●0―2、0―5 多田大祐(白蓮会館)
藤原準Vも持てる力は出し切った 7月のKCC切符もゲット
藤原に、うれしい「空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ(KCC)」の出場切符が届いた。
KCCは7月に東京で開かれ、8人で争う優勝賞金1000万円のトーナメント。今大会は決勝で鈴木未紘に敗れたが、すでに鈴木がKCC日本代表に選ばれていたため、選出が決まった。
フィジカル面を鍛えて臨んだ大会だった。準決勝は最終延長にもつれこむ激戦となったが、強烈な突きを武器に、漢藍理に勝利した。力を出し切り、決勝を終えると、「やりきりました」と充実感をにじませた。「もっとスタミナをつけたい」。KCCへ向けて気持ちを新たにした。
【藤原の成績】
▼1回戦 ○4―0 本田志帆(極真武道空手連盟 極真拳武會 川崎元住吉支部)
▼準決勝 ○0―2、2―2、5―0 漢藍理(新極真会佐賀筑後支部)
▼決勝 ●0―2、0―5 鈴木未紘(新極真会厚木・赤羽支部)
網川3位、藤田も8強
KCCの日本代表に決まっている女子軽重量級の網川来夢(20)が3位に入り、来年のWFKOの出場権も手にした。準決勝で敗れはしたものの、気迫あふれる組手で会場を沸かせた。敗戦後は悔しさをにじませていたが、気持ちを切り替え「7月また頑張ります」と、KCCに照準を向けた。
【網川の成績】
▼2回戦 ○5―0 石井結衣(我流空手道北斗會)
▼準々決勝 ○2―2、5―0 大塚未夢(新極真会徳島北東あわじ支部)
▼準決勝 ●0―0、0―4 目代結菜(東京城南川崎支部)
▼3位決定戦 ○不戦勝 篠原智美(新極真会福岡支部)
男子中量級の藤田春人(21)が初めて2日目まで勝ち残った。危なげなく勝利を重ね、準々決勝で準優勝した吉沢穂高と対戦。左の上段が吉沢の鼻先をかすめるなど、慌てさせる場面もあったが、惜しくも延長戦で敗れた。福岡支部の道場生から「春人先生、頑張って」と大きな声援を受けていただけに、「勝てなくて申し訳ない。でも2日目まで残ったことは自信になります」と振り返った。
【藤田の成績】
▼2回戦 ○5―0藤岡元(新極真会神奈川東横浜支部)
▼3回戦 ○5―0 瀧藤夢叶(真盟会館)
▼準々決勝 ●0―2、0―5 吉沢穂高(東京城南川崎支部)
(2024/6/3紙面掲載)