◆第１０５回全国高校野球選手権記念宮崎大会　▽決勝　宮崎学園１―０聖心ウルスラ学園（２５日・ひなたサンマリンスタジアム宮崎）

　宮崎の決勝では、宮崎学園・河野伸一朗（２年）と、聖心ウルスラ学園・渡野弘翔（３年）の投げ合いとなり、延長１０回タイブレークの末、宮崎学園が１―０でサヨナラ勝ち。春夏通じて初の甲子園出場を決めた。佐賀は、県立校同士の顔合わせとなった決勝で、鳥栖工が神埼清明を７―０で破り、春夏通じて初めての甲子園切符を勝ち取った。

両軍譲らず９回まで０－０

　雨の中で始まったゲームは、ほどなくして晴れ間が広がった。蒸し暑さと、強烈な日差しが照りつける過酷なマウンドで、両左腕の意地がぶつかりあった。

　１８９センチ、７５キロ。宮崎学園の河野は、長身から投げ下ろす角度のある直球と、低めに鋭く曲がるスライダーが武器。「とにかく腕を振れ」。崎田忠寛監督（４１）の指示通りに、準決勝で１４点を挙げた好調の相手打線に対し、真っ向勝負を挑んだ。９回を投げ終えた時点で、７安打無失点１１奪三振。一方の聖心ウルスラ学園の渡野も譲らない。ピンチになればなるほど、気迫を前面に出し、９回５安打無失点。同じく１１奪三振の力投をみせた。

　スコアボードに並んだ１８個の「０」。熱中症への注意喚起が何度もアナウンスされる中、試合時間は２時間３０分を超え、勝敗の行方は、無死一、二塁からのタイブレークにもつれ込んだ。

最後は代打・渡辺が決めた

　「最高の球を投げ込んでこい」。崎田監督にそう言われて１０回表のマウンドに向かった河野。犠打で１死、二、三塁とされた最大の勝負所で躍動した。１２個目の三振を空振りで奪うと、次打者を力のない投ゴロに仕留めた。１０個目の「０」を刻み、小さく左拳を握った。

　その裏。２年生左腕の力投に、打線も応えた。１死二、三塁から代打の渡辺隼人（３年）が迷いなく振り抜くと、打球は右翼手の頭上を越えた。準決勝に続く、２試合連続のサヨナラ勝ち。河野もベンチを飛び出し、歓喜の輪に加わった。

　創部２１年目で春夏を通じて初めての甲子園出場。その立役者となった左腕は「ピンチでも味方を信じて投げ込むことができた」。この日投じた全てで、懸命に腕を振った。その充実感に満ちた、１５６球だった。　（加藤　博之）

（2023/7/26紙面掲載）