【わんにゃんリポート】北九州で遺棄されたミニチュアダックスフント52匹のその後

 北九州市とその周辺の市町で今年5~7月に遺棄されているのが見つかり、保護されたミニチュアダックスフントが、新たな飼い主のもとで新生活を始めようとしています。計52匹が心ない人に捨てられた事件から約2か月。犬たちのその後が気になり、18匹を保護した北九州市動物愛護センターを訪ねました。(松永 康弘)

保護されているミニチュアダックスフント。仲良しのメスたちは寄り添うように過ごしている

北九州市動物愛護センターで譲渡の予約受け付け中

 9月15日、北九州市小倉北区の渡辺久美さん(40)、小学6年生の長女・羽咲さん親子が同センターにやって来ました。保護された犬の中から1匹を譲ってもらうためです。ニュースで事件を知って心を痛め、「捨てられた犬を飼って幸せにしたい」と思ったそうです。

 渡辺さんは獣医師から犬の飼い方やしつけ方の講習を受けた後、譲渡候補の3匹と顔を合わせました。8歳と13歳のオスは元気そうなしぐさ、12歳のメスはお祈りするようなポーズを見せていました。

 この日のうちに譲ってもらう犬を決めるつもりでしたが、渡辺さんは「3匹ともかわいすぎて、なかなか1匹に絞れません。家族5人で話し合って決めます」と話し、帰宅しました。

センター職員(左)の説明を聞きながら、犬と触れ合う渡辺さん親子

5歳~10歳前後の成犬を公園などで保護

 この事件は北九州市や宗像市、岡垣町などで起きました。ミニチュアダックスフントばかりが公園や高架下、路上などで見つかり、総数は52匹に上りました。いずれも5歳から10歳前後の成犬で、虐待や衰弱は確認されていません。

 このうち同センターに保護された犬は、運動できる程度の広めの犬舎にいます。オスとメスに分けられ、一日に2度の食事をおいしそうに食べています。

 オスは元気があり余っている様子。比較的おとなしいメスは、体を寄せ合って過ごしています。記者がそっと頭をなでると、体を寄せてきました。「人慣れしてるな」という印象。ほおずりすると、ちょっとうれしそうです。その表情から、安心を取り戻した様子がうかがえました。

運動量が多く、元気いっぱいのオスたち

遺棄した犯人は「繁殖業者」の可能性も

 こんな、かわいい犬たちをなぜ捨てたのでしょうか。しかも、ミニチュアダックスフントばかり。県と北九州市は、同一の飼い主が遺棄した動物愛護法違反の疑いもあるとして福岡県警に情報を提供し、調査を進めています。

 遺棄されたのは10歳前後の成犬が多く、まだら模様の珍しい「ダップル」が目立つことから、成犬に子犬を産ませる繁殖業者の可能性も指摘されています。もしそうだとしたら、「犬はお金もうけのためだけのモノですか」と問いたい。

ミニチュアダックスフントを保護している「北九州市動物愛護センター」

問い合わせ127件 愛知県など遠方からも

 この事件が全国ニュースになった7月、同センターには電話やメールなどで計127件の問い合わせや意見が寄せられました。「犬を助けてほしい」「その犬をぜひ飼いたい」といった内容で、愛知県などの遠方からもありました。

 センターでは犬の健康状態に留意しながら、身元情報を登録したマイクロチップの装着、オスは去勢、メスには避妊を施した後に譲渡します。9月5日から譲渡を始め、同14日までに7匹の飼い主が見つかりました。見つからない場合は、動物愛護団体などへの譲渡を考えているそうです。

 「保護したすべての犬が幸せになれるように職員みんなで祈っています。そして、このような事件が二度と起きないように願ってやみません」。稲冨秀敏所長(57)の言葉が胸に響きました。

飼い主が見つかったメスは、手渡される際に飼い主をじっと見つめ、「よろしくお願いします」と言っているようです

20日から動物愛護週間 命の尊さを考えよう

 捨てられた時、どんなに悲しい思いをしただろう。えさもなくさまよっている時、人間に保護され、どんな気持ちだったろう。そんなことを考えながらセンターを後にしました。

 9月20~26日は動物愛護週間です。ペットを飼っている人もいない人も、みんなで動物の命の大切さ、尊さを考える機会にしたいものです。
     ◇
 愛犬家の記者が最新のペット事情を探る「わんにゃんリポート」は随時、掲載します。

(2022/9/20Web限定公開)

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