【わんにゃんリポート】もしもの時に飼い主ができる救命処置とは ペット救命セミナーをレポート

 先日、ペットの救命、もしもの時の応急処置などを目的に「ペット救命セミナー」(サイコロしあわせのバトン協会主催)を自宅で開催した。東京から講師を招き、福岡県内を中心に19人が参加した。犬の正常な心拍数や呼吸数などを教わり、ぬいぐるみを使った実技指導では真剣に手や体を動かした。学び多き約3時間で豊富な知識を得られ、充実感を抱いた。一方で、飼い主として、これまであまりにも無知だったことを思い知らされた。今回はその様子をレポートする。 (松永 康弘)

ぬいぐるみを使って心臓マッサージを実践する参加者ら

心肺蘇生はぬいぐるみを使って実践

 受講者は午前の部が10人で、午後の部は9人。会場は講師を前に、左右に5人ほどずつ分かれていすに座り、講義を受けた。中央部を実技指導スペースとして、講義、実技指導、実技の順でテーマに沿って進められた。はじめにZoomを使ったオンラインで主催者代表・堀江純栄さんのあいさつで始まり、講師や参加者への感謝の言葉とともに、「家族の一員であるペットのためになるので、一生懸命受講してください」と呼びかけた。

 まず「救命処置」として、病院へ引き継ぐまでの心肺蘇生を学んだ。初動の時間が勝負なのでスピーディーに行うことを肝に銘じ、脇腹近くの心臓の位置を確認して、十分な強さと速さで絶え間なく行うことを頭に入れた。圧迫の強さは、胸部の厚みの3分の1ほどが沈み込むまでで、テンポは1分間に100~120などと具体的な回数も教わった。実技指導では中型犬サイズのぬいぐるみを使い、参加者は誰一人として気を抜かず、万が一の時に備え、大事な点に注意しながら一生懸命に手や体を動かした。

人工呼吸の実技も一生懸命行った

人工呼吸は気道確保後に舌を手で引き出してから

 続いてのテーマは人工呼吸法だった。ペットの鼻と気道が一直線になるような姿勢を取って気道を確保した後に、気道閉塞が起こらないように舌を手で引き出して、口を塞いで鼻から1秒に2回、息を吹き込むことなどを知った。胸部圧迫30回、人工呼吸2回を1セットにして行うことや、目視による確認法も学び、講師が息を吹き込む様子を見てから、参加者は額に汗をにじませながら実践した。スマホで写真に収め、あらかじめ渡されたテキスト(A4判6ページ)にポイントを書き留めることも忘れないようにした。

ペットの致死率高い熱中症に対する説明も

 後半は「応急手当」に時間が割かれた。救命、苦痛軽減のほか、脈の取り方、誤飲で気道に挟まった異物の除去、止血法、外傷や骨折、やけどなどをした場合の対応方法を学習。犬の血液量は体重の約9%程度で、失ってはいけない血液の量はその4分の1に当たることなど、初めて知るような内容も多かった。対処法は具体的で、担架での運び方は人間と同じ様に頭を後ろ位置にして前へ進むことも理解できた。ペットの致死率が高い熱中症に関する説明もあり、「水分を取らせる」「低体温症を引き起こさない体の冷やし方」など詳しく学んだ。

気道異物除去の実技指導も行われた

 覚える必要があることばかりで、頭の中が混乱しそうにもなったが、ポイントや数値はテキストに記載されていて助かった。あとは、実際に起こった時、落ち着いて対応できるかどうか。周囲に助けを求めることをちゅうちょせずに行うなどと、講師のアドバイスが分かりやすかった。ネットでペットについて詳しく調べる時は、最新の内容を検索した方が良いといった注意点も教えてもらった。

 最後の質問の時間では、ほとんどの参加者が、もしもの時に備えて疑問を投げかけ、それぞれに回答を得られた。「我が子(ペット)」のことを思うあまり、質問はより現実さを増し、答えに納得するまで尋ねる姿が印象的だった。

質問コーナーでは我が子を思い、具体的な疑問が数多く寄せられた

ハッとした質問「犬の心臓はどこ?」

 人間は、万が一の状況になれば救急車を呼び、医療を受けることができる。しかし、いとおしいペットは、飼い主だけが頼りだ。そんな時、寄り添って、ほんの少しでも痛みをやわらげることができたら、ペットも飼い主も、心や体が少しでも休まるかもしれない。

 セミナーを取材して学んだことは、将来きっと生かされるに違いない。いや、生かしていかなければならない。

 印象に残っている講師の言葉は、「犬の心臓はどこにあるかご存じですか?」という冒頭の質問だった。ハッとさせられた。知らない! 犬4匹の飼い主として本当に恥ずかしかった。脇腹の下あたりに位置することを知ったが、まだまだ勉強が足りない。今回をきっかけに、飼い主として少しだが成長することができた。講師の永吏(エリー)さん、具体的で分かりやすいセミナーをありがとうございました。そして、受講した皆さん、記者も一緒に成長していきますので、これからも家族として「大切な子(ペット)」を見守っていきましょう。


取材後記

 一昨年の8月以来、約2年ぶりに投稿した。この間に我が子たちも、雄のトイプードル2匹が11歳まで成長し、雌のトイプードルは6歳、雄のミニチュアダックスフントは4歳になった。これまで、誤飲や腫瘍発見など数々の試練はあったが、何とか無事に過ごさせてもらっている。

 昨年の暮れだったか、「ペット救命セミナーを福岡でやりませんか?」という勧めが、「命を守ることを学び、命を救う活動を応援する」という東京の「サイコロしあわせのバトン協会」(堀江純栄代表)から妻にあった。同協会をサポートしている妻は一度、東京で講義を受けた経験があり、「絶対にためになるけん」と言って開催を決断、記者も協力することに。経費を抑えて受講費を全国一律にするため、手狭ながら我が家のリビングを会場として使った。講師・永吏さんのリズミカルで説得力のある講義と実技指導、一生懸命に取り組んでもらった参加者のおかげで充実した一日になった。

元ボートレーサーの池田明美さんは、「絶対に受講したい」と熱望して参加し、保護活動の近況報告を行った

現役ボートレーサー加藤綾さんや保護活動家の池田明美さんらも参加

 山口県から来てくれた保護活動家の元ボートレーサー池田明美さん、そのつながりで参加した現役ボートレーサーの加藤綾さん、協会のインスタグラムやSNS、口コミなどで駆けつけてくれた保護活動家、ペットサロンのオーナー、リンパマッサージ師、看護師や動物看護師、動物愛好家の方々には、「本当にありがとう」という言葉だけでは言い表せないくらい感謝している。愛する我が子を一生涯見守っていきましょう。セミナーが終わった時、「勉強になりました」「また開催してください」と言われ、本当にうれしかった。

犬と猫の保護活動をサポートする現役ボートレーサーの加藤綾さんも参加した

 参加者の皆さん、会場が狭くて本当にご不便をおかけしました。でも、本当にありがとう! 永吏さん、参加者のみなさん、この機会を与えてくれたサイコロしあわせのバトン協会代表の堀江さん。  (松永 康弘)


講師を務めた永吏(エリー)さん

 ◆永吏(エリー) 東京消防庁から上級救命認定をされている応急手当指導員。米国獣医救命救急医療専門学会にも認定され、愛犬飼育管理士、人と犬の整体師など数多くの資格をもつ。テレビ出演も多い。


 トイプードル3頭、ミニチュアダックスフント1頭を飼っている記者が、最新のペット事情を探る「わんにゃんリポート」を随時、掲載します。

(2024/9/26Web限定公開)

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