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【福岡】「野武士伝説」語り部として半世紀/西鉄ライオンズ球団発足70周年
- 2021/12/25
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元リリーフ投手 安部和春さん
福岡市・中洲に近い博多区上川端町のビルにあるスナック「ドンレオあべ」に入ると、落ち着いた店内でマスターの安部和春さん(81)が迎えてくれる。西鉄が強かった時代の主にリリーフ投手で、1963年(昭和38年)に最後のリーグ優勝を決めた最終戦で勝利投手となった。首位南海と最大14・5ゲーム差から巻き返し、最後は4連勝して「奇跡の逆転優勝」と語り継がれている。
最後のリーグV貢献
大分県杵築市出身の安部さんは当時、23歳。縫い目を外して握り縦に鋭く落ちる「アベボール」を武器に10勝を挙げて優勝に大きく貢献した。日本シリーズで西鉄は、巨人の王貞治・長嶋茂雄の「ON砲」に計7本塁打を浴び、敗れた。安部さんも王さんに2本を喫し、「良い打者は甘い球を逃さない。ON時代の到来を感じました」と振り返る。
カウンターに平和台球場のスコアボード周辺を再現した精巧な模型が置かれている。西鉄ライオンズ研究会から寄贈された力作で、優勝時の様子を広告も含めて忠実に作られており、9番打者のところは「1安部」とある。
ファンと一緒に美酒
優勝した夜、ナインは料亭での祝賀会の後、中洲のキャバレーに繰り出した。「一般のお客と一緒に飲み、喜びを分かち合いました。選手とファンの距離が近かった」と安部さん。個性的ではつらつとした選手たちはネオン街でも人気を博した。よく先輩が音頭を取って繰り出したが、「よくモテた仰木彬さんはいつも単独行動で、後輩の我々には動きがわからなかった」と懐かしむ。
引退後 博多で開店
安部さんは阪神で現役を終えた後にこの店を開いた。西鉄OBも顔を見せて旧交を温めている。かつてはほかにもOBたちが店を出していたが、今も残るところは少ない。元選手から直接、聞ける話には希少価値がある。店には遠方から若いファンもやって来る。西鉄を生で見たことのない世代だが、安部さんは「どういうチームか、と聞かれた時、しっかりと話せるように心がけています」。語り部は、穏やかな口調で野武士伝説を教えてくれる。(おわり)
(2021/12/21紙面掲載)